入学・進学・就職など、新しい生活が始まる春。
二十四節気の1番目の節気が「立春」であるように、暦の上で「春」は1年の始まりを表しています。
わくわくした気持ちに入り混じり、どこか環境の変化にどきどきや不安を感じやすい時期でもありますね。
冬も終わり、ぽかぽか陽気を感じるあたたかな季節である春。
ですが、「気を張る」「気を遣う」春はそんな場面も多く、どこかお疲れモードに。
なんだかみんなが輝いて見えて、自分だけ置いてけぼりのように感じてしまう。
そんな風に心への影響が出始めると、五月病となって「体と心のSOS」が現れることも…。
「新芽の芽を摘まない」という意味でも、春のキーワードは「のびのび・ゆるゆる」
中医学の視点でみる「春の特徴」や「春の不調」を知ることで、あたたかな春を伸びやかに過ごすことができます。
毎日の暮らし方ひとつで、その季節を快適に過ごせる体と心へと調えていけることはもちろん。
まわりの悩む人へも、そっと寄り添ってあげられるでしょう。
「春と調和する薬膳」おすすめの食材も紹介します。
この記事を読むと
- 中医学でみる「春」や「現れやすい不調」の特徴が分かる
- 「のびのび・ゆるゆる」した春の過ごし方が分かる
もくじ
中医学でみる「春」の特徴
自然界との調和を大切にしている中医学。
季節の変化も、もちろん体と心に大きく影響します。
中医学でみる「春の特徴」をみていきますね。
- 草木のようにのびのびと成長する
- 「肝」のはたらきが高まる
- 春の邪気「風邪(ふうじゃ)」が走り回る
春の特徴①草木のようにのびのびと成長する
ぐんぐん伸びる草木は、柵に囲われてしまうと「伸びたい方向に伸びていけない」
そんな状況に、自然界では窮屈さを感じてしまうでしょう。
実は、自然界に生きる人も同じです。
「新しい環境で頑張るぞ」と思うと同時に、ドキドキや不安もまた強く感じる新生活。
長い時間心がきゅっと締め付けられると、やがてストレスとなって現れます。
五月病と呼ばれる、無気力感やうつうつした感じ。
それは4月から1か月間、頑張ってきた体と心からのSOSでもあるのです。
春の特徴②「肝」のはたらきが高まる
「肝」は気血水の動きをコントロールしたり、血を貯めておくはたらきがあります。
肝の「気」を上へ上へあげようとするエネルギーが強くなると、体の中の「熱」も体の上の方に昇ります。
そのため春は、目の充血・のぼせ感・頭痛・肌荒れなど体の中でも上の方に不調を感じやすくなるのです。
カラカラの乾いた陽気が、体の上のほうに上がってくるイメージだよ。
また、エネルギッシュな肝は疲れやすくもあります。
肝が疲れてはたらきが弱くなると、気のめぐりがスムーズに流れずに滞ります。
すると、「もんもんとした感情」や「イライラした感情」が生まれる原因に…。
春は、「高まりすぎ」または「弱った」肝のはたらきをコントロールすることが大切です。
春の特徴③春の邪気「風邪(ふうじゃ)」が走り回る
体の中には生きるための「正気(せいき)」というエネルギーが存在します。
不調のきっかけとなる「邪気(じゃき)」が外から入ってくると「正気」が邪気と戦ます。
中医学において病気とは、正気が負けてしまった状態のことを言うのです。
邪気は「六淫(ろくいん)」といって6つあります。
- 風邪(ふうじゃ)
- 暑邪(しょじゃ)
- 火邪(かじゃ)
- 湿邪(しつじゃ)
- 燥邪(そうじゃ)
- 寒邪(かんじゃ)
風邪(ふうじゃ)はふわふわと軽い性質を持ち、フットワークが軽く走り回ります。
- 症状が移りやすい
- 症状が変わりやすい
- 症状が出る場所が変わりやすい
このような特徴があり、風邪が体の中に侵入することを「体の中でも風が吹く」と言われています。
春に現れやすい不調である「頭痛・めまい・鼻水・鼻詰まり・目のかゆみ・発疹」などは、風邪の特徴が出ていますよね。
「春」に現れやすい不調
のびのび新芽が伸びる時期。
新生活で心がきゅっと締め付けられてしまうと「春」特有の不調が出やすくなります。
「肝」のはたらきの影響
- イライラ・うつうつ・怒りっぽい
- 目が充血する・涙がでる
- のぼせ・火照り
- 耳詰まり・耳鳴り
- 考えこんで眠れない
肝のはたらきが高まると、結果的に肝が疲れてしまい気を巡らせる力が弱まります。
そのため気が滞り、気滞の症状が多く見られます。
肝には体の中の「気」を上に上げるはたらきがあります。
そのはたらきが高まりすぎることにより、体の上のほうに炎症を伴う不調が出るのも春の不調の特徴です。
「風邪(ふうじゃ)」の影響
- 頭痛・めまい・発熱
- 鼻水・鼻づまり
- かゆみ・発疹
- 目の痙攣 ・ドライアイ
春は、冬に溜めた老廃物を外に発散する時期でもあります。
また春の肌は、冬の乾燥によるダメージでバリア機能や保湿機能が弱っています。
そこに風邪が走り回ることで、体の中に花粉・ほこり・黄砂などが侵入しやすい時期。
そのため、肌や粘膜が刺激を受けて肌トラブルも起きやすくなります。
まさに「花粉症」の症状ですね。
秋冬の養生で気・血・水を調えること。
それは、風邪に負けない体を作り、春を快適に過ごすために備えておくということなのです。
中医学養生「春」の過ごし方
あたたかな芽生えの季節を、晴れやかな気持ちで過ごすには2つのポイントがあります。
- 肝を養う養生
- 風邪(ふうじゃ)への対策
肝を養う養生
- 肝の熱を冷ます
- 肝の陰血を補う
- 高ぶった肝のはたらきを落ち着かせる
- 気の滞りをめぐらせる
高まった肝のエネルギーを抑えるのは「血」のはたらきです。
エネルギッシュな肝はたらきを、陰血のうるおいでしっとり落ち着かせるイメージだよ。
春は、「気」と一緒に「血」も消耗しやすい時期です。
PMSが悪化する原因にもなるので、特に「補血」を意識していきたい時期でもあります。
「肝」を養う食材
■肝の気をめぐらせる
- ねぎ
- 生姜
- 玉ねぎ
- 紫蘇
- かぶ
- らっきょう
- にんにく
■肝の血を補う
- 黒豆
- 小豆
- ほうれん草
- 小松菜
- ひじき
- 青魚
- レバー
- 牡蠣
■肝の熱を冷ます
- せり
- セロリ
- 豆苗
- 小松菜
- ゴーヤ
- レンコン
- スイカ
- 緑茶
花粉症の症状が辛い人は特に、スパイスの効いた辛い料理は控えます。
辛味は熱を生んで、さらに上へと昇らせるはたらきがあるから炎症の症状が強くなってしまうんだね。
気滞の症状(イライラ・もやもや)が強い人は、イモ類などおなかが張るような食材を控えて、気を巡らせる香りの良い香味野菜や柑橘フルーツ類を選ぶと良いです。
風邪(ふうじゃ)への対策
実は、風邪(ふうじゃ)にもまた、それぞれキャラクターがあります。
- 体を冷やす風邪
- 熱がこもる風邪
- 熱や水分が溜まる風邪
- 乾燥する風邪
それぞれの風邪に合った対策が大切なんです。
①カゼの引き始め・ゾクゾクする寒気は、体が冷えている状態です。
養生法
- ふわっと汗をかいて老廃物を排出する。
- 「体の栄養となるもの」は意識しなくてOK
体を温めて汗をかく食材
- ねぎ
- 生姜
- 玉ねぎ
- 紫蘇
- かぶ
- らっきょう
- にんにく
②寒気はしない発熱・ドロドロした鼻水は体が熱を持っている状態です。
養生法
- 体の表面から汗をかいて老廃物を排出する。
- 風寒証と同じく「栄養」よりも毒素の「排出」を優先する。
体を冷まして汗をかく食材
- ミント
- 大根
- きゅうり
- ごぼう
- 豆腐
- 白身魚
- 緑茶
③倦怠感・関節痛・締め付けられるような頭痛・微熱は、体に余分な熱と水分が溜まっている状態です。
養生法
- 辛味のものや、うるおす力の強い食材は避ける。(山芋や貝類)
熱と湿を取り除く食材
- 紫蘇
- ごぼう
- ゴーヤ
- レンコン
- アスパラガス
- 大根
- ハトムギ
④発熱・のどの渇き・唇の渇きは、体が乾燥して熱を帯びている状態です。
養生法
- 体をうるおすものを食べる。
- 辛味のものは、うるおいを逃すので避ける。
体をうるおす食材
- 杏仁
- 大根
- えのき
- トマト
- 山芋
- りんご
- はちみつ
「鼻詰まりと、のどの渇きを感じる」というように、不調は組み合わさって現れることが多いです。
そんな時に、大根と豆腐のお味噌汁にしてみるなど「食材の組み合わせ」も薬膳の楽しさでもあります。
春は「肝」の季節。
はたらきが高ぶって熱を帯び、高ぶりすぎた肝は、弱まって気が滞ったりします。
高ぶった肝は、「血」が十分にあることで落ち着きます。
また、春は「風邪(ふうじゃ)」が走り回る季節でもあります。
風邪による不調は、「冷えている」「熱がある」「乾燥している」など自分の体の「いつもとの違い」に気付くことが大切です。
新生活が始まり、ドキドキ不安で少し心がきゅっとしてしまうことも。
春の体と心を「のびのび~」「ゆるゆる~」と、調えてみてくださいね。